研究活動・テーマ

農 の 勧め

6月14日は、情報社会学会で話をしていました。テーマは、「小規模農家向け安定的高収益農業の検討」。学会なので、論文としてまとめると、何かよくわからない難しいタイトルになってしまいます。
簡単に言えば、「小規模な、家族経営農家でも、きちんとした仕組みをITで支援すれば、農業で自立していく事が可能です」というものです。

食の安全が社会全体で注目されていますが、長期的に考えると、安全どころか食料そのものが足りなくなる時代が目の前に来ているわけです。国連の予想では、2050年前後には、地球の総人口が100億人前後になり、この総人口を養うためには、現在の地球全体の総食料供給量では足りないのです。
ところが、農地は増えるどころか減っています。中国は産業発達に伴い農地は減っていますし、バイオ燃料の関係で小麦やトウモロコシも減っているわけです。

このような問題を踏まえ、私の最近の最も関心のある研究テーマの一つが、「農」なのです。調べると、予想以上にITが貢献出来る内容が多く、内容的にも非常に面白いです。トマトを中心に、果樹、伝統野菜など、興味の範囲が広がっています。
農におけるIT活用としては、おそらく、大きく二つ、考えなければ行けない点があります。
まず一つ目として、従来のハードウェア偏重を改めるような貢献をソフトウェアが成し得るかという事です。従来の農分野の取り組みは、ハードウェアが主体となっており、非常にコストを要するものでした。農の革新を促進するためには、このコストを劇的に下げなければ行けない。それだけの価値を、ソフトウェアが供出できるのか。もちろん、ハードウェアを全く利用しないという事ではない。実際に食物を栽培するわけですから、ハードは必要です。最低限度のハードで最大限の効果を出すためのソフトは何かという事です。
もう一つは、人間の知に着目しながら、技術を否定しない事です。昨今の風潮として、従来の取り組みがうまくいかないと、「人間が直接取り組む事が素晴らしい」ということで、可能な限り人力に頼る傾向があるのではないでしょうか。農業で言えば、祖父やその前の時代から培われてきた、昔ながらの、作業の多くを人手に頼るという方向です。この方向が素晴らしいのは、どんな機械やシステムよりも、熟練した人間のほうが、自然環境や作物の変化に柔軟に対応できるからです。ただ、人間が出来る事には物理的な限界があります。また、経験知が少ない人の対応能力にも限界があります。技術やシステムを評価する事は必要ですが、それ自身を否定しては、今の時代ではやっていけないと思います。単価が非常に高い野菜となり、購入できる人はごく一部に限られるでしょう。産業として農を確立していくためには、やはり、技術は不可欠だと思います。

ITの専門家が農業? と、疑問を持たれる事も多いですが、上述のような点に留意して進めていくためには、既存の枠組みと違うところから進められると言う意味でも、ITが取り組むにふさわしい分野だと思います。


2006年までの私の研究テーマ

2006年3月まで岐阜を活動拠点としておりました.その際に興味を抱いていたトピックを整理してみました(今は,この他のテーマにも取り組んでいますが,下記3点に興味があることは変わりません.

今までの私の主な研究テーマ(興味)は以下の3点でした.

1点目は,日本の競争力の源泉である「ものづくり」と情報技術とのコラボレーションの推進です.現在,市販されている製造業向けソフトウェアの多くは,コスト低減を目的としたソリューションを支援する事に主眼がおかれた大企業向けのものです.しかし,コスト低減を進めるだけでは,人件費が高い日本の国際競争力を維持する事は出来ないでしょう.「ものづくり王国日本」の競争力を支えてきた,高い技術力を持つ中小規模の製造業の競争力強化は,10年後の日本経済を考えたとき不可欠な取り組みではないでしょうか.岐阜県内の中小製造業各社の協力により,彼らの競争力を維持し更に高めるためのソフトウェアの研究開発を行なっています.

2点目は,地域社会,地域経済の中長期的な持続性を持つ成長モデルを築くための行政の在り方です.この行政の在り方として,従来良く提唱されてきたオープンソース概念を拡張し,「オープンリソース」という概念を新たに提唱し,地域政策との具体的な連携を深めています.この概念に関しては,日経デジタルコアに掲載された私の記事,あるいは日経ビジネス(2003年12月15日号,一刀論断)等を参照ください.

3点目は,地域における人材教育です.特色のない情報教育は,地域経済活性化に結びつきません.各地域における教育は,その地域の産業に根ざした視点で実施する必要があるのではないでしょうか.「夢を持たない若者が多い」という発言を聞く事がありますが,それは「夢を持つ事が難しい世の中」となってしまった背景の影響も大きいと思います.自分自身や学生の成果の現実社会への適用を積極的に行なう「産学連携」を推進する姿勢が学術機関には必要とされます.この際,現実社会における連携先として,大手企業を想定するだけでなく,その地域の産業界との連携を深める事が,地方における学術機関の取るべき姿ではないでしょうか.

2006年度の活動

昨年度の主な活動です.ざっと記憶にあるものを,まとめて掲載...

2007年3月15日
地域の「既存産業」活性化へ新たな産学官連携・岐阜県のねらい

2007年3月9日
MIC Report vol.2

2007年2月16日
MIC岐阜提携記念講演会「IT が切り開く、これからの地場産業」

2007年1月25日
イノベーティブ社会基盤フォーラム「イノベーションを育む環境をどう構築するか」

2007年1月15日
地域・中小メカトロニクス企業のIT活用戦略」

2006年11月30日
情報社会のデザイン 合同シンポジウム「基調 挨拶」

2006年10月20日
京都大学フィールド情報学セミナー 情報MOT「事例」

2006年8月30日
社会におけるAI研究会 第1回「社会に対するAIの技術適用」

2006年8月5日
IAMAS Open House 「ITの活かし方」

2006年6月7日
人工知能学会全国大会 「社会におけるAI研究」